令和世代の未来を創る「蓄電技術のベストミックス」とは?

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令和、明けましておめでとうございます。

蓄電池の赤本の、吉永健之です。

令和に入って1ヶ月が経過しました。

とうとう新しい時代に入りましたね。

最初は少し違和感があった令和の元号も、すっかりなじんできましたね。

今回は、新時代の幕開けにふさわしい記事として、将来のエネルギーの仕組みを構築する上で重要な、蓄電池を含めた蓄電技術全般を取り上げたいと思います。

今年最初の記事『「次世代電力供給システム」のカギを握る蓄電池』でも取り上げたとおり、令和世代の未来のために、次世代の送配電システムを構築する上で、蓄電池は大きな役割を果たします。

しかし、蓄電池には、以下の2つの大きな弱点があります。

1.長期的に電気を蓄えることが難しい

2.瞬間的な出力変動に弱い

そこで、今回はこの2つの弱点を補う蓄電技術である、水の水素化技術およびフライホイール技術と蓄電池との連携について取り上げたいと思います。

長期間の蓄電が得意な「水の水素化技術」とは?

蓄電池は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯めます。そして蓄電池の+極にはプラスの電荷が、-極にはマイナスの電荷がたまっています。

そのため、電化製品などの「負荷」をつなげていなくても、+極では、空気中のマイナス電荷と、-極では空気中のプラス電荷と結びつく「自己放電」という現象により、貯めた電気が少しずつ消費されていきます。

皆様も、古くなった乾電池を懐中電灯などに使うと、使用時間が短くなるというご経験があると思いますが、これも自己放電によるものです。蓄電池も乾電池と同じで、使わない状態でも時間がたつと、容量が減ってきます。

つまり、蓄電池は「自己放電」により長期間電気を貯めることは、難しいという弱点があるのです。

将来、太陽光発電の導入量が増え続けた場合、発電量の多い夏場に電気が余ることが予想されます。すると、再生可能エネルギーの有効利用のため「夏場に余った電気を半年間貯めておき、発電量の少ない冬場に使う」という必要性がでてきます。

そうなった場合、半年間という長期間の蓄電に適した技術として有効なのが、水の水素化による蓄電技術です。

皆様は、小学校か中学校の理科の実験で、水の電気分解をされたことがあると思います。水に電気を通すことで、化学反応が起きて水素と酸素に分解されます。

実験の最後で、水素に火を付けると小さな爆発が起こり、びっくりした記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

水の水素化による蓄電技術とは、理科の実験を応用して、再生可能エネルギーの余った電気などで水を電気分解し、水素として蓄えるものです。

つまり電気エネルギーを、水素という燃料として蓄えるものです。

水素は常温では空気と同じ「気体」ですが、マイナス252.6℃の超低温にすると、石油などと同じ「液体」として蓄えることができます。

将来、水素の低温保存技術が進歩すれば、水素は石油と同じように、長期間保存が可能となり、夏に余った電気を冬まで保存して使えるようになります。

そして、液体の水素を低温にせずに、常温のままでで保存する技術開発も行われています。

参考:スマートジャパン記事「水素の貯蔵・輸送技術が進展、実用化に残る課題はコストダウン」

液体水素の常温保存技術が実用化されれば、水素を石油と同様にタンカーを使って、エネルギーの不足している国に運ぶこともできます。

つまり、送電線がなくても海を隔てた遠い地域に、再生可能エネルギーで余った電気を送ることができるのです。

蓄電池と水の水素化技術との連携は、地球規模でのエネルギー問題の解決に向けても、大きな可能性を秘めています。

1週間以内の短い期間での蓄電は「蓄電池」で行い、1ヶ月以上の長い期間での蓄電を「水の水素化」で行うという役割分担により、再生可能エネルギーのムダをなくし有効利用が可能となります。

蓄電池と水の水素化技術の連携により、発電量の多い時間帯に行われている、出力制御(出力抑制)で余った電気を捨てるという勿体ないこともなくなるでしょう。

瞬間的な出力変動に強い「フライフライホイール」とは?

再生可能エネルギーは、天候などにより出力が変動するため、火力発電や原子力発電に比べて、出力が不安定という大きな弱点があります。しかもその出力は、日射量や風速の変化などにより瞬間的に急激に変化して、蓄電池の充電回路に大きな負担をかけます。

実際に、出力安定化のためにメガソーラーや大規模風力発電に、蓄電池を併設するプロジェクトも活発化していますが、発電所の規模が大きければ大きいほど、その出力変動も大きくなり蓄電池の充電回路を消耗させます。

蓄電池は、充電電圧が決まっているので、天候により変動する電圧を蓄電池の充電部分にある安定化回路で、一定の値の安定した直流電圧に変換します。しかし、電圧変動が大きくなればなるほど、蓄電池の充電回路に負担をかけて、劣化を早めます。

つまり、電圧変動が大きければ大きいほど、蓄電池の寿命が短くなってしまうのです。

そこで、短期間の瞬間的な出力変動を安定化させて、蓄電池を守るために注目されているのが、「フライホイール」です。

フライホイールとは、電気エネルギーを物体が回転する運動エネルギーとして蓄える技術です。その歴史は古く、かつては無停電電源装置として、多く使われてきました。現在は、主役の座をバッテリー式の無停電電源装置に譲っていまが、再生可能エネルギーの成長に伴いその不安定な電源を安定化させるために、再び脚光を浴びています。

フライホイールは、太陽光発電や風力発電で作った電気で、モーターをによりある程度の重さのある円盤を回転させます。そして、その円盤の回転エネルギーで、発電機を回転させて再び電気に変換します。

フライホイールは、電気エネルギーを円盤が回転する運動エネルギーに変えることで、再生可能エネルギーの瞬間的な電圧変動を吸収する効果があります。

円盤などのある程度の質量を持つ物体は、一定の速度で回転させると、慣性の法則で同じ速度で回転し続けようとする特性があるため、天候による急激な電圧変動を吸収できるのです。

つまり、フライホイールは慣性の法則を利用した電圧安定化装置で、瞬間的な電力の変動を安定化するのに効果を発揮します。

しかしフライホイールは、以下の通り2回エネルギーの変換を行うため、少なからずエネルギーの損失が発生していました。

フライホイールによるエネルギー変換:電気エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギー

この損失を減らすため、超電導を利用したフライホイールの研究が行われています。

参考:日経 XTECH記事『「超電導フライホイール」で太陽光の出力安定化、実用化に前進』

蓄電池とフライホイールを連携させることで、蓄電池の寿命を延ばすことができるだけでなく、蓄電池容量の節約もできます。

海外では、既にフライホイールと蓄電池の連携を実用化させた事例もあります。

2017年に、アメリカ合衆国のアラスカ州では、風力発電による出力変動を蓄電池とフライホイールを連携により、蓄電池の容量を節約し寿命を延ばしながら、安定化させる「ハイブリッド蓄電システム」を導入しています。

この「ハイブリッド蓄電システム」により、30万人の人口を抱えるアラスカの州都アンカレッジを中心に、最大で17メガワットの電力を供給しています。

参考:スマートジャパン記事:フライホイールと蓄電池、アラスカの街を照らす

フライホイールは、蓄電池と連携しない場合でも、電力系統の安定化にも有効です。

太陽光発電や風力発電を電力系統につなげて系統連系させる場合に、間にフライホイールを介して出力変動を緩和することで、系統の安定化が期待できます。

参考:鉄道総合研究所「超電導フライホイール蓄電システムの開発状況と鉄道応用」

フライホイールにより、系統安定化のための火力発電所の出力調整の負担が軽減され、電力会社側の経費削減も期待できます。

日本国内でも、フライホイールと蓄電池との連携の、早期実用化を期待したいですね。

まとめ

蓄電池には、「長期的に電気を蓄えることが難しい」、「瞬間的な出力変動に弱い」という弱点があります。
この弱点を補う蓄電技術として注目されているのが、「水の水素化技術」と「フライホイール技術」です。

蓄電池と水の水素化技術およびフライホイール技術の「ベストミックス」により、それぞれが、お互いの弱点を補いながら、長所を高め合うことで再生可能エネルギーの安定化が、可能になるのではないでしょうか?

蓄電技術の連携により、再生可能エネルギーの最大の弱点である「不安定さ」が解消されることで、その普及を促進し、令和世代の子供達により良い地球環境を引き継ぐことができるでしょう。

蓄電池の赤本では、蓄電池の普及を通じた電力の安定供給と持続可能な社会造りを目指して、蓄電池の役立つ最新技術を発信していきます。

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