蓄電池の赤本の、吉永健之です。
今回は、蓄電池に大きく関わってくる「太陽光発電の2019年問題」について、取り上げたいと思います。
現在の、太陽光発電の固定買取制度ができたのは、2009年の11月です。
2019年問題について、太陽光発電の固定買取制度ができてから、現在までの太陽光発電をとりまく状況を説明しながら、2019年問題の背景についても掘り下げながら、ご説明したいと思います。
目次
太陽光発電の固定買取制度は、2009年11月に地球温暖化対策を目的に開始
太陽光発電で発電した電気を、固定価格で買い取る制度が始まったのは、今から9年前の2009年11月です。
この制度が始まった背景にあるのが、前年の2008年の福田内閣が発表した、「クールアース推進構想」それを具体化した「福田ビジョン」です。
「福田ビジョン」による、地球温暖化防止のための温室効果ガスの削減の一環として、再生可能エネルギーの拡大が目標に掲げられました。
翌年2009年7月に、再生可能エネルギーの拡大に向けて、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」が制定されました。
そして、2009年11月にこの法律を元にして、一般家庭への太陽光発電設備を普及促進するために、現在の太陽光発電余剰電力の固定買取制度がスタートしました。
太陽光発電(10kW未満)の固定買取期間は10年間
固定買取制度では、太陽光発電で発電して使い切れない余剰電力を、電力会社が設置した年に定められた固定価格で10年間買取を続けることが定められました。
2009年に制度が始まった時点での買い取り価格は、電気料金の約2倍に当たる48円/kWhです。
なぜ、48円/kWhと高額なのかと言いますと、太陽光発電を設置するのにかかる初期投資費用を、回収できるようにするためです。
そして、その初期投資費用の回収をするために、適切な期間として定められたのが10年間です。
10年の固定買取期間を過ぎた後は、改めて電力会社と契約を結び直すこととされましたが、この当時は、電気料金程度の価格とされていたようです。
固定買取制度を支える「再生可能エネルギー発電促進賦課金」
固定買取制度により、電力会社は10年間の期限付きとは言え、電気料金を大きく上回る金額で、太陽光発電の余剰電力を買い取らなければなりません。
さらに、電力系統に流れ込む、太陽光発電の不安定な電力を安定化させるために、揚水式発電所や火力発電などを出力調整する必要があります。
電力会社にとっては、太陽光発電の固定買取量が増えれば増えるほど、それに伴う経費負担が大きくなります。
そこで、この太陽光発電の固定買取に伴う経費負担を補うために、作られたのが「再生可能エネルギー発電促進賦課金(略称:再エネ発電賦課金)」の制度です。
再エネ発電賦課金は、電力会社が太陽光発電などで発電された、再生可能エネルギー電力を買い取るためにかかる経費を、電気料金という形で私たち消費者が負担する制度です。
毎月の電気料金の検針票「電気使用量のお知らせ」をご覧になるとわかりますが、電気料金内訳の一番下の項目に「再エネ発電賦課金」の項目があります。
再エネ賦課金は、電気使用量に応じた金額を、私たち消費者が電気料金として、電力会社に支払っているのです。
太陽光発電の普及拡大により低下する固定買取価格
2011年3月11日に発生した、東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故とそれに伴う電力危機は、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの価値を高め、大きく普及拡大させるきっかけとなりました。
2012年には、産業用の大規模太陽光発電などを対象とする、太陽光発電の全量買取制度が開始したことにより、メガソーラーが大幅に増加します。
太陽光発電の増加に伴い、電力会社の買取による経費負担が増え、再エネ発電還付金は年々高くなっています。
それと同時に、太陽光発電の固定買取価格は、年を追うごとに低下しています。
固定買い取り価格の低下は、太陽光発電自体の価格が下がり初期投資の負担が減ってきていることもありますが、電力会社の買取による経費負担を軽減するという大きな目的があると思われます。
2009年に開始当初は電気料金の約2倍となる48円/kWhだったものが、2018年時点では、電気料金とさほど変わらない26円/kWh(出力制御対応機器設置義務なし)になっています。
来年の2019年も24円/kWh(出力制御対応機器設置義務なし)と発表され、今後も低下が予想されます。
こうした背景もあり、2019年以降に固定買取期間が終了する太陽光発電の買い取り価格は、電気料金よりも低くなることが予想されています。
以上ここまでは、現在の太陽光発電の固定買取制度の沿革と背景をご説明しました。
では、ここからは2019年以降の固定買取制度の終了について、具体的に見ていきたいと思います。
2019年に固定買取期間が終了するのは、「10kW未満の太陽光発電」を「2009年まで」に設置したご家庭
2019年に固定買取期間が終了するのは10kw未満の太陽光発電設備を2009年までに設置した方です。
10kW未満と10kW以上の違いとは
太陽光発電は、出力によって固定買取制度が変わりその境目となるのが、10kWです。
10年間の固定買取期間が適用されるのは、10kW未満の小出力のものです。
屋根の面積から家庭用に設置する太陽光発電は、大部分が10kW未満です。
しかし、屋根の広いご家庭で、太陽光発電の面積が広い場合は、10kW以上の場合もあります。
では10kW以上はどうなるのと言いますと、2012年に開始した、全量買取制度が適用されるので、固定買取期間は2倍の20年になります。
10kW以上の場合、2012年に太陽光発電設備を設置したご家庭が、固定買取期間を終了するのは、2032年と先になります。
このように、太陽光発電の出力によって買取期間は大きく違います。
ここで注意していただきたいのは、太陽光発電の出力はメーカーの仕様による、基準となる条件下における発電能力なので、実際の発電量とは異なります。
ですので、太陽光発電の正確な出力をご存じでない方は、ぜひ取扱説明書などでご確認いただければと思います。
2009年以前設置と2010年以降設置の違いとは
2009年11月と12月に、10kW未満の太陽光発電設備を設置したご家庭は、10年後の2019年の同じ月に固定買取期間が終了します。
2009年11月に開始した方は、2019年11月に、2010年12月に設置した方は2019年12月終了します。
2009年10月以前に設置した方の場合は、事情が違い、固定買取期間の終了は、すべて2019年11月です。
なぜかと言いますと、2009年10月以前に設置した方は、現在の制度の前の古い制度のもとで売電を開始しているので、2009年11月に現在の制度に移行してから10年後の2019年11月に、固定買取価期間が終了となります。
そして、2010年以降に設置した方の場合は、10年後の同じ月に固定買取期間が終了します。
例えば、2010年1月に設置した方は、2020年1月に固定買取期間の終了を迎えます。
2015年1月に設置した方は、2025年の1月に固定買取期間の終了を迎えます。
そして、これから太陽光発電を設置する方の場合、例えば2020年1月に設置した場合、固定買取期間が終了するのは、2030年1月です。
2019年問題という言葉のニュアンスからは、「2019年にだけ発生する問題」と誤解を招きかねない面があります。
正しくは、「2019年11月以降に毎年発生する問題」であり、2020年以降も毎年、順次固定買取期間を終了するご家庭が発生します。
この固定買取期間の終了については、太陽光発電を設置したご家庭に正しい情報が伝わっていない場合が多く、情報不足による混乱が懸念されています。
そこで、政府でも資源エネルギー庁のホームページなどで、2019年問題の概要と対処法を掲示しています。
2019年以降の固定買取期間終了についての、資源エネルギー庁のページはコチラ
固定買取期間終了後はどうなるの?
2019年の11月以降、10年間の固定買取期間が終了した後はどうなるのでしょうか?
大きく分けて2つの選択肢があります。
その選択肢の呼び方はについてはいくつかありますが、ここでは資源エネルギー庁のホームページに合わせてご説明します。
選択1:自家消費(自家消費を拡大する)
これまで、売電してた「余った電気」を全て自家消費して使い切る方法です。
売電収入はなくなりますが、増えた自家消費分だけ光熱費を削減できる効果があります。
どのように自家消費するのかは、主に次の3つの選択肢があります。
1.電気自動車(EV)に充電する
電気自動車(EV)を購入された方や購入予定の方は、余った電気をその充電に使うことができます。
電気自動車が、ご自宅の車庫に駐車している時間に、太陽光発電で使い切れなかった電力を充電することで、夜間などの発電していない時間に利用することができます。
また充電した電気を走行に利用することで、「燃費向上」にも役立てることができます。
2.エコキュートの昼間利用で、お湯を沸かすのに使う
エコキュートは、電気の力で熱交換(ヒートポンプ)技術によりお湯を沸かすシステムです。
電気温水器が、電気を直接熱に変換してお湯を沸かすのに対し、エコキュートは電気の力で空気中の熱を取りだしてお湯を沸かします。
電気温水器よりも、少ない電力で効率的にお湯を沸かせるのが特徴です。
昼間に余った電力でお湯を沸かすことで、給湯にかかる費用を削減できる効果があります。
エコキュートは元々は安い深夜電力を使って、お湯を沸かすことを目的に開発されました。
しかし、太陽光発電の固定買取期間終了を目の前にして、昼間利用が注目されています。
気温が高い昼間に使うことで、気温が低い深夜よりも少ない電力で、効率的にお湯が沸かせる効果も期待出来ます。
エコキュートの購入のために、30~50万円程の初期投資が必要となりますが、すでに購入されている方は、設定を変えることで昼間利用に切り替えることができます。
3.蓄電池に貯めて、夜間や悪天候時に使う
経済的に余裕のあるご家庭には、おススメの方法です。
蓄電池は、エコキュートに比べると、100万円~200万円と高額ですが、災害による長期停電時にも電気が使えるというメリットがあります。
今年9月の北海道の大規模停電をはじめ、最近は災害による長期停電が多く発生しています。
停電による生活への影響は、計り知れないものがあります。
蓄電池は、災害による長期停電に備えた「防災用品」として重要性が高まりつつあります。
そして、蓄電池は災害時だけでなく通常時においても、賢く使うことで長期的に初期投資を回収しながら、光熱費を削減する効果もあります。
蓄電池は、初期投資額は大きいですが、「防災」と「光熱費の削減」という2つの面で大きな役割を果たすので、経済的に余裕のある方は、ぜひご検討していただきたいと思います。
蓄電池の赤本でも、蓄電池選びに役立つ情報を発信していきます。
選択2:相対・自由契約(余った電気を「売る」)
前述の選択1「自家消費を拡大する」では、電気自動車かエコキュート、蓄電池の購入が必要となります。
初期投資をする余裕がない場合は、今までどおり余った電気を売ることもできます。
固定買取期間終了後は、大手電力会社との契約が終了しいわゆる「自由契約」となります。
しかし、大手電力会社と再び売電の契約をすることで、これまでの固定買取価格よりは下がりますが、売電収入は得られます。
大手電力会社の固定買取期間終了後の買取価格は、まだ公表されていませんが、10円~12円/kWh程になると見られています。
また、電力自由化により誕生した、新電力会社からは、大手電力会社より高い値段で買い取ってくれる会社が出てくる可能性もあります。
これまでの大手電力会社と再契約して、電気を買い取ってもらいながら、高く買い取ってくれる新電力会社を探すことができます。
そして、消費電力の大きい電化製品をなるべく、昼間に使うようにして自家消費を増やし、出費を抑えながら蓄電池の価格が下がるのを待って購入するのも、賢い方法と言えるでしょう。
近年の、蓄電池の技術革新は目覚ましく、小型化と低価格化が急速に進んでいます。
「蓄電池の赤本」も随時、蓄電池の最新情報を発信していきますので、ぜひ随時チェックしてください!
2019年問題に便乗したあおり商法にご注意を!
2019年問題において、買い取り価格が0円になると不正確な情報で、お客様をあおり蓄電池を売りつける「あおり商法」の発生が懸念され、政府も注意を呼びかけています。
前述のとおり、固定買取期間が終了した後は、買取価格は下がりますが、0円になることはありません。
そうした、あおり文句に惑わされずに、賢い選択をしていただきたいと思います。
あおり商法に注意を呼びかける、資源エネルギー庁のページはコチラ
蓄電池の技術面にも踏み込んだ、正確な情報をお届けします!
蓄電池の赤本では、2019年以降に、固定買取期間を終了するご家庭に向けて、本当に必要な正しい情報を発信していきます。
そして、蓄電池のご購入による自家消費をご検討の方に向けて、蓄電池の正しい情報を発信して参ります。
蓄電池の赤本は、太陽光発電アドバイザー、第2種電気工事士などの資格を持った、蓄電池と再生可能エネルギーに詳しい電気エンジニア出身のライターが、主に記事を担当します。
エンジニアとして、技術面を分かりやすく正確に伝えることには、徹底的にこだわっていきます。
そのためにも、随時、専門書を参照しながら、記事の正確性をチェックしていきたいと思います。
正確性を明確にするためにも、専門書のどの部分を参照または引用しているのかを、記事の中で明示していきます。
最後に、記事を書くにあたり、参考とする専門書を、一部ですがご紹介します。
リチウムイオン電池の安全性と要素技術 鷲島真一氏著 科学情報出版(株)発行
住宅用蓄電池の主流となる蓄電池についての技術専門書です。
蓄電池の技術面での正しい情報を発信するために、随時参照して参ります。
革新型蓄電池のすべて 小久見善八氏、西尾晃治氏監修 (株)オーム社発行
蓄電池の最新技術についての専門書です。
蓄電池の最新技術を発信するために、随時参照して参ります。
太陽光発電システムの設計と施工 一般社団法人 太陽光発電協会編 (株)オーム社発行
太陽光発電システムの設計と施工について書かれた技術専門書です。
蓄電池選びをする上で、太陽光発電システムとの連携による相性が重要となります。
本書では、太陽光発電システムの一部として蓄電池にも書かれてるので、太陽光発電との連携について正確な情報を発信するために随時参照していきます。
その他、必要に応じて蓄電池や太陽光発電に関する専門書を参照し、正確で本当に必要な情報を分かりやすく伝えていきます!
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
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